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『全国有機農業者マップ 第4版』

(日本有機農業研究会発行)

定価2,200円

A4判

168ページ

発行 日本有機農業研究会


交流を深めるために

 『第4版 全国有機農業者マップ―自給と提携でいのちを支え合う人びと―』が完成しました。このマップの初版は、日本有機農業研究会が生まれて25年目の1996年2月に刊行されました。全国の仲間たちがどの地域でどんな生活や農業をしているか、どのような提携を行っているかを知らせあい、連絡を取り合って会員間の信頼や交流をいっそう深めていくことを目的としています。

 

研修受け入れ・新規「提携」受け入れの有無も

 近年は、有機農業を始めようとする人たちが、研修先の訪ねる参考にしたり、生産者との提携を始めたい人たちが、自分の希望に近い提携先を探したりというような使い方も増えてきました。『マップ』には、研修受入の有無、消費者にとっては新規の「提携」受け入れの有無がそれぞれの生産者ごとに記載されています。

 

読んで楽しく、新たな出会いも

 『マップ』にさまざなな役割が増えるなかで、約5年ごとの改訂を重ね、第4版は2011年1月に原稿募集を開始しました。しかし、その2ヶ月五の3月11日に東日本大震災、そして福島第一原子力発電所の事故が起きました。そのため、寄稿を予定していた方も、震災後の処理や後片付け、被災地へのボランティア、放射性物質への対応等で時間がとれなかったり、なかなか原稿を書く気になれなかったりしたのではないでしょうか。少し落ち着いた頃に、徐々に原稿が集まるような状況が続きました。また、3月11日以前に書かれた原稿に、原発に対する考えを追加してくださった方もおり、図らずも第4版は「有機農業と原発は共存できない」という想いを共有する場にもなったと思います。

 今回も、新しく参加してくださった方、残念ながら事情により掲載できなかった方、第3版出版以降に結婚をしたり、お子さんが誕生したり、世代交代をされた方等、いろいろな方がいます。すでに第4版以前の『マップ』をお持ちの方は、楽しく時の流れを感じることができると思います。初めて手にとった方は、各地の有機農業者や関係団体との出会いが、きっと胸を熱くさせることでしょう。

 

周囲の方にも広めてください

 前回からさらに活用しやすくするために、デザインにも工夫をしました。『全国有機農業者マップ 第4版』を、ぜひこの機会にお求めください。また、有機農業を始めたい方、生産者との提携を始めたい方にもご紹介ください。最後になりましが、作成に関わったすべてのみなさまに、この場をお借りして感謝申し上げます。


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【最新刊!】『生きている土壌 腐植と熟土の生成と働き』

(エルハルト・ヘニッヒ 著  中村英司 訳)

エルハルト・ヘニッヒ 著

中村英司 訳

定価1,995円

発行 日本有機農業研究会

発売 (社)農山漁村文化協会


 

生命をはぐくむ腐植が織り成す土の物語

有機農業に書けたヘニッヒの熱い思い 中村英司(訳者)

 

 著者のエルハルト・ヘニッヒは1906年、ドレスデン(現ドイツ・ザクセン州都。第二次世界大戦後は東ドイツ)に生まれ、少年時代から農業に関心を持ち、農科大学で学んだあと国家認定農家として、また農業技術士として農業の現場で働いた。40歳(1946年)のとき、100ヘクタールの農地(国有地)を貸与され、これを有畜有機農場として営農し、大成功を収めた。1950年、ベルリンのフンボルト大学教授の腐植研究者だったグスタフ・ローデ博士の研究助手となり、さまざまなプロジェクトに参加し、多くを学んだ。

 52歳(1957年)のとき、意を決して家族と共に西ドイツ・ミュンヘンに移住し、そこでも農業指導員となり、さらに1962~72年の10年間は有機農業の団体「土と健康」の代表者として、有機農業を志す農家のために働いた。

 ヘニッヒは1998年、92歳で亡くなったが、その長い生涯の終わり近くに一冊の本を出版した。読者がめにしておられる『生きている土壌―腐植と熟土の生成と働き』(原題『肥沃な土壌の秘密―人間の生存基盤である自然の守護神としての腐植の働き』)である。

 激動する東西ドイツの狭間に生き、90年の生涯をかけて有機農業の技術の発展に尽くしたヘニッヒのあらゆる思いと思索がここに凝縮していると思われる。たとえば、その一部を取り上げるなら、腐植粘土複合体を基軸とする団粒構造が作り出す「熟土」(弾力性のある熟畑の土壌)の豊かな生成と展開こそが、有機農業の中心となる。その為には、土地の土壌生態系、とりわけ腐植と植物の根系と土壌微生物の緊密な関係を壊さないように注意深く土壌に接していくことが重要であるとした。

 

推薦文 熊澤喜久雄「日本語版に寄せて」より

 「土は生きている」と言われているように、土壌は多くの特徴的な生物群を含み、植物生産、有機物分解、水分保全などさまざまな重要な機能を発揮している。

 有機農業あるいは環境保全型農業の基本は有機物施用による土づくり、熟土つくりにある。

 土の中の生物の分解物は植物の根毛から吸収され、植物を養っている。土壌は生命をはぐくんでいる。健全な土は健全な作物、健康な動物を育て、栄養豊かな食品を供給し、人間の健康を保障している。

 本書はこのような「生きている土壌」の「豊かさ」の秘密を探り、それを分かりやすく説明したものである。

 

 

本書参考文献にありますとおり、原著の参考文献を原文のままここに掲載させていただきます。(HP管理者)

 

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参考文献および用語集
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【書評】『食と農の原点 有機農業から未来へ』

(日本有機農業研究会 出版委員会)

執筆者 佐藤喜作、中屋敷宏など19名

発行:日本有機農業研究会

本体価格1,800円(税込)


 

 このたび本会では、『食と農の原点 有機農業から未来へ』を刊行いたしました。これは、全国各地で有機農業を「生産者と消費者の提携」(生消提携・産消提携)という方法で長年実践してきた農業者が中心となって開いた次のようなシンポジウム等で話したことを基にとりまとめたものです。

 一つは、「食」の荒廃が「飽食」を経てすでに「崩食」の時代に入っているという危機感を踏まえた「『崩食』の時代を農政のあり方から問う」日有研シンポジウム(06年8月28日)です。そして現下に進行する「構造改革」「新農政」で崩壊寸前になっている農業・農村の現状から未来へ向けた「農業・農村の未来と有機農業」日有研シンポジウム(06年12月10日)、07年2月11日には「冬のシンポジウム―有機の田畑から平和を考える」が開かれました。また、07年3月10~11日には、毎年恒例の「全国有機農業の集い(日本有機農業研究会全国大会)が愛知県豊橋市で開かれましたが、その分科会報告からも一部を収載しました。また、遺伝子組み換えと食料についての論考も寄せていただきました。

 今、日本の「食」と「農」は、崩壊の危機にさらされています。戦後つづいた工業化・都市化優先政策で集積されたものがさらに、「構造改革」「新農政」によって追い討ちをかけられています。本来、市場化になじむはずのないものが容赦なくグローバル経済の中に投げ込まれてきました。そのような中で、本書執筆者19名は、それぞれの場であるべき農の姿、食のあり方を求め、有機農業に取り組んできて今日を迎えています。折から、2006年12月には、議員立法による有機農業推進法が制定されましたが、単に有機農産物を増やすための農業の推進ということでは、有機農業の本来の広く深い目標には及びません。本書には、現状の食と農を見据えた中から、未来へ向けた発言が収められています。

 本会発行の本書は、現在のところ、本会事務所がじかに販売(頒布)する形になっております。ぜひとも貴誌紙でご紹介いただき、幅広い読者を得られますよう、ご協力いただければ幸いです。


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【待望の復刊】『暗夜に種を播く如く』

(『土と健康』1992年1月号より)

一楽 照雄 著

A5判 上製 定価2,000円

発行 協同組合経営研究所

発売 農山漁村文化協会

   日本有機農業研究


日本有機農業研究会の創立者 一楽照雄さん(1906-1994)

 公害、食品公害、環境破壊が露わになった1960年代後半、一楽照雄さんは「近代化農業」の誤りに気づき、他方、生命の農を説く意志梁瀬義亮さん、自然農法の福岡正信さん、無農薬農業を実践する久保政夫さん、予防医学に立つ農村医学を確立した佐久総合病院の若月俊一さんらと出会い、71年10月17日、日本有機農業研究会を創立しました。

 一楽さん起草による「結成趣意書」は、いわゆる近代化農業は、「主として経済合理主義の見地から促進されたものであるが、この見地からは、わが国の農業の今後に明るい希望が期待を持つことは甚だしく困難である」としりぞけ、「人間の健康や民族の存亡という観点が、経済的見地に優先しなければならない」とし、たとえ「農薬・化学肥料等の使用によって、一面で増産や省力などの経済効率があったとしても、他面でこれらによる環境破壊や食べ物の汚染などを生み出すのであれば、これに代わる農法の確立を急ぎ、間に合わない場合にはひとまず伝統的な農業に立ち返」り、「従来の農法を抜本的に反省して、あるべき姿の農法を探求す」べきであると宣言しました。

 

「天地、機有り」

 一楽さんは、結成に先立ち、71年4月、千葉に閑居していた黒澤酉蔵さんを訪ねました。黒澤さんは、1942年に「野幌機農学校」(現在の酪農学園大学)を創立しています。一楽さんは、学校名の“機”に着目し、その意味合いを尋ねたのです。すると黒澤さんは、「『天地、機有り』と漢書にある」、「機とは、天地経綸というか、大自然の運行のこと。一つの法則が宇宙万物の間にはある。これが本当にわかっていなければ農民にはなれない。・・・・・・透徹すれば、自然にわかる」、と答えられました。

 すでに1950年、酪農学園はジェローム・ロデイルの著書『Pay Dirt』を『黄金の土』という題名で翻訳発行していました。その後一楽さんは、アルバート・ハワード(インドで有機農業の基礎を気づいた『農業聖典』の著者)の『Soil & Health』の翻訳(邦訳名『ハワードの有機農法』)にも奔走します。会の名称に掲げた「有機農業」とは、「生命あふれる」という字義を超えて、欧米の有機農業の先達がよりどころとした東洋の叡智にも相通じるものです。以来、会は、あるべき姿の農と食、人と自然、人と人との有機的な関係を追求してきました。

 

「世直し運動」

 「私が有機農業を始めたのは、日本の農業政策を否定し、本来の農業をやらなければいけないと考えたからです。間違っているのは農業だけではない。人間の体と心を侵すのは世の中全体がおかしくなっているからで、必要なのは世直し運動だと思っている。

 有機農業運動は、わかりやすい問題の一つで、これは、一般の人たちが世直しのために立ち上がる最初の入り口だと思っている。安全な食べ物への関心に始まり、農薬や化学肥料を使わない農業の意味に気づき、さらに身近な潜在の問題に取り組み、そして原爆反対運動に参加する。こうした行動をともなった自覚の過程に真の自立があり、そこに互助の精神が加わって、本物の世直し運動になると思っている。」