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足立区都市農業公園だより(7)

―有機農業サポート室活動レポート―

『踏み込み温床づくりと育苗にトライ』

有機農業サポート室指導員  明石 誠一

 

 3月に入り、夏野菜の準備で忙しくなってきました。いよいよ始まったかという感じです。この時期から一気に一年が駆け抜けていきます。都市農業公園(以下略して都市農)で去年植えた夏野菜の苗たちは、魚住さんの農園で作ったものを使いました。しかし今年、都市農で苗を作ることになりました。

踏み込み温床の枠


 発酵熱で発芽を促す

 

 温床は「おんしょう」または「おんどこ」と読みます。簡単に説明すると、木枠を作り(写真①)、ワラで周りを囲い(②)、その中に落ち葉、ワラ、米ヌカなどを層状に積み込み、水をかけながら踏込んでいきます(④ きつく踏込みすぎないこと)。その温床の上に、土を詰めて種を蒔いた箱を乗せ(⑤)、発酵熱で発芽を促すものです。こうすることで、6月下旬から7月初めには、夏野菜を収穫することが出来ます。

 

 温床を作る時期は、地域によって違いますが、都市農では、苗を定植(育苗した苗を畑へ植えること)する時期から逆算して、3月9日に行いました。定植は、都市農辺りでは、霜が降りる心配がなくなる5月に入って行いますが、雨よけハウスの中なら4月中旬以降でも良いと思います。

 

なお、夏野菜の種は、温床をつくった日に蒔きました。

 

①竹で枠をつくる

②ワラを竹枠にはさみこむ

④水をかけながら落ち葉を踏み込む

⑤播種したトレイを並べる


 すべてを均一に撒くこと

 

 都市農の温床の木枠の大きさは、180cmX450cm(内法)。踏み込む高さは40cm~50cm。一層7~8cmくらいで、5~6層踏み込みました。使用した米ヌカは5袋(15Kg入り)。一層に付き米ヌカ1袋弱を撒いたことになります。また、ぼかし肥(魚粉と米ヌカと水を混ぜ合せ発酵させたもの)も一層に付き手箕で2杯分(7Kg前後)を均一に撒きました(③)。一連の作業を行いながら、水を均一に撒き続けます。

 

 発芽がきれいに揃うようにするためには、種を蒔いた箱を温床の上に乗せた時に水分の偏り、発熱のムラが出ないように、落ち葉、米ヌカ、ぼかしは平に均一に、水もムラなく均一に、撒くことが大切です。

 

 温床の上に種を蒔いた箱を並べ終えたら、竹で作ったトンネルの骨組みをワラの壁に差込み、農ポリオレフィンをかけて保温します(⑥⑦)。

 

 おんどは、踏み込んでから5日ほどで上がってきます。1週間ほど30度くらいまで上がり続け、その後徐々に落ち着いてきました。適切な室温は15℃~27、8度前後。育苗の期間は、温度管理に一番気を使います。天候の変化に合わせて朝、昼、夕と、何度もハウスの開け閉めを行います。これは、都市農で働いている方たちの協力なくしては出来ません。

 

 こうして今年の都市農は、「踏み込み温床作り」と「育苗」にトライ。どんな野菜ができるか、とても楽しみです。

③手箕でボカシ肥をまきながら踏み込む

⑥竹で作った骨組み

⑦夜は保温する


 

足立区都市農業公園
【場所】 東京都足立区鹿浜2‐44‐1
【交通】 東武伊勢崎線西新井駅から都市農業公園行き(東武バス)終点(都市農業公園)下車
【開園時間】 午前9時~午後5時
【休園日】 12月28日~翌年1月4日まで。公園管理のため前記以外に閉園することがあります。
【TEL】 03‐3853‐4114

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足立区都市農業公園だより(8)

―有機農業サポート室活動レポート―

『着々と進む夏野菜の準備』

有機農業サポート室指導員  明石 誠一

 今年の春は少し寒い日もありますね。都市農業公園(以下略して都市農)の夏野菜の準備は着々と進んでいます。今回はどんな種を温床に蒔いたか(次ページの表参照)、そしてその野菜たちが畑に定植されるまでの流れをご紹介したいと思います。

 

斜めに植える苗の定植


 地温を保って定植後の活着をよくする

 

 種は育苗箱か、セルトレイに蒔きました。セルトレイとは小さなポットが連結になっているようなもので、200穴や、178穴の穴があいたものなどがあります。都市農では178穴のものを使いました。

 

 このセルトレイは、根を切らないで定植できるという利点がありますが、定植が遅れると苗が老化してしまうという注意点もあります。育苗箱を使ったものは、次にポットへ移植するものなどでトマト、ナス、ピーマン、セロリ、スイカ、マクワウリ、キュウリ、カボチャでした。

3/9 床土をふるう


3/9 床土をふるう

4/6 レタス類の定植

4/6 カボチャの定植

 ポットへの移植の際、キュウリなどの瓜類は双葉が出て、本葉が出そうだなという時にポットへ移植しました。このタイミングが遅れてくると、後の生育がよくないので注意が必要です。あと徒長したキュウリは、ポットに移植する時に深く植えると、その部分から根っこが出てくるので吸肥力が増します。これは定植するときにも使えます。トマトや、キュウリは徒長した部分を斜めに植えると(イラスト参照)、そこから根っこが出てきます。  サツマイモの伏せ込みは、温床の上に赤土をのせ、そこにサツマイモを少し見えるくらいまで埋め込み、その上に乾燥を防ぐために籾殻を2センチくらいの厚さにまきます。土が乾いている場合は水をやりますが、やりすぎると、芋が腐ってしまいます。

 

 地温が確保されると、定植後の活着(根が張り生きつくこと)がよくなります。太陽の熱がよくあたるようにしたり、マルチをしたりして地温を確保します。

 

 都市農では、キュウリ、インゲン、カボチャ、ニガウリ、大和芋などはハウスにネットを張ってはわせる予定でいます。夏になると、ハウスの天井から野菜がぶら下がっている様子が見られますので、一見の価値ありですよ。


 

足立区都市農業公園
【場所】 東京都足立区鹿浜2‐44‐1
【交通】 東武伊勢崎線西新井駅から都市農業公園行き(東武バス)終点(都市農業公園)下車
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【休園日】 12月28日~翌年1月4日まで。公園管理のため前記以外に閉園することがあります。
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―有機農業サポート室活動レポート―

『サツマイモ体験教室』

有機農業サポート室指導員  明石 誠一

 足立区立都市農業公園(以下略して都市農)では、さまざまな体験教室が行われています。その中の一つがサツマイモ体験教室です。この体験教室では、植付け、除草、収穫の全3回が行われ、「自分で植えたものを食べる」という、貴重な体験をすることができます。6月11日に「植付け」体験教室が行われました。

サツマイモの苗を植えつける


喜々として作業をする子どもたち

 

 午前と午後にそれぞれ40名ほどの参加者があり、ほとんどが家族連れでした。参加されたご家族の中には、どこかで見たことがある顔もあります。おそらく、お米作り教室などでお会いしているのでしょう。こういった体験教室に参加することは、本当に良い事だと思います。好奇心旺盛な子どもの時期に五感をフル活用することが、旬の教育ではないかと思いました。

サツマイモの苗取り

 この体験教室は、ほかのそれとは一味違います。どこが違うのかと言うと、都市農の中で、サツマイモの苗を仕立てていて、その苗取りからやることです。踏み込み温床(落ち葉と米ヌカを層状に積み、その発酵熱を利用する)に伏せこんだサツマイモからツルが伸びていて、それを切って畑に挿すと、ツルの節から根っこが伸び、それがサツマイモになるのだと、実際に体験できるのです。

 

 昔ながらの有機農業だからこそ出来る事だと思います。そして、サツマイモの苗を挿す畝は、あらかじめ機械で作っておきましたが、畝の上を平らにならし、25㎝間隔(畝幅90㎝)に植える目印をつける作業も、参加者の皆さんにやっていただきました。


 せっかくの体験教室ですから、その方が楽しかったと思います。最初は、はさみを使ったり、重たいものを持ち上げたりする作業は、大人の方にお願いする予定でしたが、子どもたちは「やりたーい!」と、すすんでやっていました。

 

 一家族20株の苗と決めていましたが、まだ植わっていないところがありましたので、「終わるまでやってくださーい」と声をかけると、子どもたちは、われ先にと苗を取りに行きます。本当に楽しそうで、こちらが嬉しくなります。やらされているのではなくて、やりたくてやっているという気持ちが伝わってきて、いい感じです。

子どもたちで畝を作る


 参加者の中には、自分の手よりもはるかに大きな軍手をしていたり、ビーチサンダルのようなもので来ている子もいたり、裸足になってやっている親子がいたり、とさまざまでした。

 

 教室の最後に魚住さんが、参加者の皆さんに言っていました。

 

 「軍手を使っていただいても結構です。でも出来れば素手で、土や道具を使う感覚を味わってほしいですね」

 

 私もそう思いました。押し付けてはいけないですが、せっかくの体験教室ですから、汚れても触れてみてほしいですね。

 

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【休園日】 12月28日~翌年1月4日まで。公園管理のため前記以外に閉園することがあります。
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